訴苦(スウク)

人民解放軍に志願した若者のなかには、解放軍とはいったい何なのか訳もわからないまま、ただ食うためだけに応募した人間も少なくなかった。しかし中国共産党はそうした「質の悪い」人間をも筋金入りの共産主義者に育て上げた。それを可能にしたのが、「訴苦」という独特の教育方法であった。

訴苦

それは、一人ひとりにそれぞれ自分の生涯で一番苦しかったことを皆の前で報告させ、それがなぜ起こったのか、その原因を全員で究明していくという方法である。もちろん最初は皆口が重いが、少しずつ言葉に出しているうちにやがて胸のうちをさらけだすようになってくる。なかには自らの家庭を襲った悲惨な体験を思い出し、感極まって男泣きに泣き出すものも出てくるという。

ここで教官はさらにその原因を徹底的に追求するよう促す。そうすると、こうした苦のほとんどが地主や官僚、軍閥などの搾取、あるいは日本帝国主義に原因があるということがそのうち参加者の頭に反射的に浮かび上がるようになってくる。この段階にいたって初めて共産主義思想による階級教育が施されるのである。このやり方にしたがえば、どんな始末の負えない不良でも数か月のうちに模範的な解放軍兵士に育っていくのだという。

これはいうまでもなくいまでいう洗脳にほかならない。しかし、多くのひとが実際このようにして筋金入りの共産主義者に育っていったことも事実なのであろう。それにしてもかれらはいったいどこからこのような洗脳方法を学んだのであろうか。おそらくソ連から学んだものであろうが、いまのところたしかな情報はない。ただ当時、中国共産党内にはこうした教育方法をさす「洗脳(シーナウ)」という言葉があったことは間違いないようだ。

 

 

 

 

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